神宮外苑地区地区計画は見直しを~樹木約1000本の伐採に反対‼~

4月17日、再開発のために約1,000本の樹木が伐採されることで大きな問題になっている神宮外苑のフィールドワーク「神宮外苑を歩こう!」に参加しました。

主催は神宮外苑ツアー中野グループで、そのメンバーである生活者ネットの仲間の細野かよこさんから案内をもらいました。

現地で説明をしてくださったのは一級建築士の大橋智子さんと「ヴェネツィア的生活」の著者の角井典子さんです。

さらに29日には神宮外苑を守る有志ネット主催の「イチから知りたい神宮外苑再開発【再開発】連続学習会 その2」にzoom参加しました。

学習会では環境植栽学の藤井英二郎さんと都市計画学の大方潤一郎さんのお二人の専門家からお話を聞きました。また都の都市計画審議委員の原田あきら都議からも報告がありました。

以下今年2月9日に開催された都市計画審議会の資料です。

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/keikaku/shingikai/pdf/7543a.pdf

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/keikaku/shingikai/pdf/7544a.pdf

学習会の最初には私も参加した17日のフィールドワークの映像の一部を視聴しました。

神宮外苑地区は新宿区、渋谷区、港区の3区にまたがる約66haの地区で、「世界に誇れる我が国のスポーツ拠点の形成や緑豊かで風格と活力を兼ね備えた魅力的なまちの形成などを図る」として2013年に地区計画決定しました。

この地区は元々国有地でしたが戦争でGHQのものとなり、1952年に国に返還、その後神宮に半額で払い下げ、内苑は国、外苑は国民の寄付で整備することが決まりました。全国だけでなく海外からも献木があり、植樹は全国から奉仕で集まった青年たちでおこなわれました。日本青年館はその時の青年の宿泊場所として作られたそうですが、今はビルの中に移設しています。

その後地区計画が具体的にまとまったとして2021年12月14日から2週間を縦覧期間として意見募集、2月の都市改革審議会で採決、賛成多数で決定してしまったという進め方です。

神宮外苑港区の資料から

計画の概要は既存の野球場とラグビー場を入れ替え、イチョウ並木入口の左手にある秩父宮ラグビー場の部分に野球場を移設し、観客席の上部にはホテルを併設し、高さが60mになります。

その後方に建っている伊藤忠商事のビルは現在高さ90メートルですが、店舗を入れて高さ190メートルになります。さらにその横には185メートルの複合棟が建ち、商業施設によって賑わいの創出を生むとしています。

4列のイチョウ並木は残すとしていますが、現在あるラグビー場との境の柵に沿って植わっている椎の木などはほとんど切られ、完成後の野球場のスコアボードを見上げるようになります。また、建設にあたり、杭を地下深く打つので基礎工事で,樹木の根が切られることで水の吸い上げが悪くなり、枯れることを角井さん、藤井さん共に危惧しています。

イチョウ並木
突き当りが聖徳記念絵画館

絵画館前の広場は5面の軟式野球場、バッティングドーム、屋内球技場、フットサルコートなど元々国民が広く楽しむ場として作られたものですが、計画では中央に広場を残すものの、両側はテニスコートと高さ15メートルの屋内テニス棟になり、国民がスポーツを楽しむ場がなくなってしまいます。

広場のまわりの針葉樹は1列のみ残して、また右手の樹齢100年の歴史がある大イチョウも伐採か移植されることになります。しかし環境影響評価書にはそのことが記載されず現状のままになっていることは問題です。

「市民が使えるスポーツ施設は全てなくなる。商業優先でお金を取って集客するスポーツ施設のみ。市民が参加できる場がなくなることは大きな問題。」(角井さん)

樹木に囲まれ落ち着いた雰囲気の国立記念文庫

国立競技場の前にある国立記念文庫の一角は保存エリアとされていますが、半分以上の樹木はなくなるとのことです。

国立競技場の整備で移植された樹木130本のうちたった3本しか樹形をたもっていません。しかもほぼ原形のままなのはスダジイ1本のみです。

かろうじてほぼ原形で残っているスダジイ(奥)

事業者は移植または保存と言っていますが、具体的な計画が示されていません。移植はおそらく無理とのことです。

こちらは移植して残った3本のうちの1本。痛々しい。

先人の宝を全く無視するような計画。
ここは関東大震災の時の避難場所だった。これから首都直下型地震に備え、避難場所として残すべきで、樹木は防火植栽でもある。
また東京のヒートアイランドを抑えるためにも可能な限り樹木は残さないといけない。樹木の付近は2~3度低く、暑い東京を冷やす。
絵画館からみて右が常緑の広葉樹が多いのに対し、左側は針葉樹のヒマラヤスギ 軸線の左右で樹種を変えていることで広場に広がりを持たせている。周りの木があってこその広場。(藤井さん)

こんなところに。国立競技場に沿って流れる渋谷川

全てに反対しているわけではなく、建て替える必要があるものは建て替えるとしても1000本の木を切らなくてもよい計画にして欲しい。どういうことが起きているのかみんなに考えてもらいたい、世論を広げていくことが大事。(大橋さん)

外苑は大正時代に整備されたときに風致地区に指定され、高い建物を建てられない地域です。ここは都市計画公園(64hr)として指定されていますが、現ラグビー場のあたりは建物が建っているので公園としてあまり利用されていない未利用地区だとして都市計画公園から除外する申請をして都は許可しています。その部分に超高層を建てることが可能になりました。

この一帯の地権者は東京都を含む7者ですが、今回の再開発事業者は土地の大半を持っている明治神宮の他に同じ地権者である日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の3者と三井不動産です。

大きなビルを建てさせお金儲けを考えている。
ラグビー場や野球場などの耐震性は良くなるかもしれないが、樹木を切って良いのか。もっと丁寧に空間のデザインを考え検討が必要だが、計画が先になっていて順番が逆になっている。(大方さん)
大方さんからは都市計画公園、再開発等促進区、都市再生特区、容積率などについて詳しく説明がありました。

都市計画公園から除外されても容積率の制限があります。195メートルの超高層ビルが建てられる理由は公園内の例えばグランドなど建物がない部分を空地とすることや、容積率いっぱいに建っていない施設の残りの容積率を集めて新たに建設する高層ビルに分けることができる「容積配分」を利用するとしています。

これは制度として良い利用例もありますが、この地区は元々許可を得なければ何も建てられない公園だったはずなので、建設費を創出するためにその制度を利用して良いのか問題です。

このようなことも「民民の問題だから公開の必要はない」と都は言っているとのことです。「都は事業者の言うことを丸のみ。」と原田さん。

しかしここは国民が広く楽しむ場として作られた公園であり、今回の計画にあたっては近隣住民だけの説明会ではなく広く国民から意見を聞きくべき、もっと議論が必要、という声が市民からたくさん上がっています。
都市計画審議会で採択するにはまだ議論が十分ではありません。
こんな大事なことを審議会の委員となっている議員の多くが賛成してしまったことが残念です。

12月には第2球場の解体が始まるそうです。
しかし民民の問題ではなく、その計画を広く公開して多くの意見を聞こうとせず進めようとする都の姿勢は、いずれ他の計画でも同じことが起きるわけです。

今回は現地を見た後で学習会に参加したことで、状況が把握できて良かったと思います。
何と言っても一度伐採した樹木は元には戻りません。命のある樹木を大量に伐採する計画の見直しを求めていきます。

熱心に説明を聞くフィールドワーク主f催者の細野かよこさんと松井奈穂さん