世田谷区立産後ケアセンターを視察

会派のメンバー 左からやない克子、岩瀬たけしさん、高口ようこさん、かとうぎ桜子さん、きみがき圭子

4月28日、練馬区議会の「インクルーシブな練馬をめざす会」のメンバー5人で世田谷区立産後ケアセンターの見学に行きました。

センターは桜新町に2018年4月に開設しています。

世田谷区は2015~2024年度の第2期世田谷区子ども計画で「子どもがいきいきわくわく育つまち」を掲げ、「妊娠期からの切れ目のない支援・虐待予防(世田谷版ネウボラ、妊娠期面接など)」を第一の重点施策としています。
この「世田谷版ネウボラ」には以前から注目していました。

説明してくださったのは子ども・若者部 児童相談支援課 要保護児童支援担当係長、そして助産師でセンター長です。

●世田谷区の状況

世田谷区の人口推移は2020年までは5歳までの乳幼児が増加していましたが、その後小学生以上の増加へと傾向が変わってきているそうです。また、ここ数年の出生率の減少と出産時の母の平均年齢の高齢化(2020年度では35歳以上が47.2%)がみられ、さらに就学前児童の約7割が祖父母と同居・近居ではないという調査結果が出ています。

●産後ケア事業を開始する経緯
・虐待予防にはできるだけ早い時期からの関りが必要。
・出産後、子どもへのかかわりがわからない、母の体調や気分の不調、近くに相談する人がいない。
・父の帰宅が遅く協力が期待できない、産後の手伝いがいない。
などの事例が多くみられたことから、必要な支援を実現するために事業を検討したそうです。

事業は委託で施設は区有地の貸付、事業費23,657万円のうち都と区それぞれ1/3の補助金を活用。運営は区の委託料として約6000万円。

プロポーザルにより委託事業者を(公社)日本助産師会に決定し、小児科で既に始めているデイケア専門の「ママズルーム」とともに2018年、産後ケア事業が始まりました。

・利用者は生後4か月未満の母子と未就学児の子ども一人まで
・ショートステイ6泊7日、デイケア7日まで
・利用料はショートステイ1泊2日9,000円で15組まで。追加料金はあり ますが、多胎利用可能です。
・デイケア(日帰り)3,000円で3組まで
・非課税世帯は減免措置があり、生活保護世帯は無料です。

区立だからこそ低い金額で利用でき、民間だと3万円くらいかかるとのことです。
また事業を利用した母子は1歳の誕生日までオンライン相談も受けられます。

子ども家庭支援センターとの連携として気になる母子がいた場合には事業者から保健師やケースワーカーに連絡、フォローします。さらに子ども家庭支援センター、健康づくり課、産後ケア事業所、所管課で年1回程度合同連絡会を実施しています。

稼働率は当初は約8割でしたが、新型コロナ感染症の影響で一部閉めたために、2020年度は約6割に減っているそうです。
ちなみに見学に行ったときは満室でした。

●施設概要
構成スタッフ 助産師24時間常在、二交代制 常勤7人非常勤25人     
保育士5人 臨床心理士1人 事務6人
給食、清掃、リネン、警備は外部業者

●センター利用の目的とケア
・サポートがない
・不安
・疲労
・授乳課題
以上のことに加えてコロナの影響もあるそうです。

ケアは母親の思いを尊重し、家族調整、休息、育児練習、傾聴、カウンセリング、区・医療連携で個別ケアをおこない自立を目指します。

●区立であることのメリット
センター長より区立であることのメリットとして
・守られた中で事業ができる
・区が窓口になってくれることが安心
・決まった予算があるので安心できる。他の自治体だと1人の金額×利用者数なので、経営の不安がある。

利用者の背景で特徴的なのは、今はマニュアル世代で育児もSNSを見ていて、赤ちゃんの生活のコントロールを気にする(昼間」寝てくれないなど)が多くなっているとのことです。

●利用者からは不安の解消、安心、気持ちが楽になり前向きに育児ができる、久しぶりに上の子と2人で過ごす時間ができた、食事のすべてがバランス良かった、など利用してよかった、などの声があり、お母さんたちが「育児が楽しくなった」と言って笑顔で帰ってくれることが嬉しい一方で、預かったその後のお母さんたちはどうなっていくのかな、という迷いはあるそうです。そこは自治体のサポートが必要とのことです。

●継続的なケアと区との連携
夫やパートナーからのDVや精神疾患、上の子の虐待相談など複合的な課題を抱えるケースもあり、産後ケアセンターを真ん中に子ども家庭支援センター、児童相談支援課、医療機関、開業助産師、育児支援グループとの連携で継続的なケアを続けていくとのことです。
特に児童相談所も区立であることでより連携強化になっているとのことです。

医療機関とどうつながっていくか、何かあった時の対応について、スタッフのスキルアップなどの課題もあるとのことですが、核家族化や地域でのコミュニティが希薄になっている中で、区が切れ目のないサポート体制をしっかりつくっていることは素晴らしい取り組みであり、「ネウボラ」の必要性

を確認することができました。

世田谷版ネウボラ(妊娠期から就学前までの切れ目のない支援) | 世田谷区ホームページ (setagaya.lg.jp)