ねりまの名木「学芸大附属大泉中のヒマラヤスギ並木」の保存を

8月の剪定後のヒマラヤスギ(校庭側)

大泉学園駅の南に位置する東京学芸大学付属国際中等教育学校の敷地内には、学芸大通りに面して1994年に「ねりまの名木」に指定された11本のヒマラヤスギがあります。車の通りが激しい中での緑の空間は貴重な存在であり、地域のシンボルとして親しまれてきました。
ところが、今年6月15日に中学校長からこのヒマラヤスギを伐採するために、名木指定を解除する申請が区に提出されました。
伐採の理由は「倒木事故等による人身事故を防止するため」です。

これに関して学校側と区側それぞれの樹木医の診断に基づいた見解が違うため、区は協議を求めてきました。

今月13日に開催された緑化委員会では、これまでの区の対応について説明を受けた後、東京学芸大学本部課長に同席いただき、学校の見解を直接伺い、質疑しました。

区のこれまでの対応

●5月25日 中学校からヒマラヤスギ11本の伐採について相談があった
理由
・台風の大型化により当該法人の各校で倒木が多発。特にヒマラヤスギの被害が多い
・人身事故の未然の防止のため、道路沿い等の危険度の高い樹木から優先して伐採す る

●6月8日 区は樹木診断を実施。健全度5段階評価[Ⅰ(良)~Ⅴ(枯死寸前)]のうち
区分Ⅱが7本、区分Ⅲが4本

●6月15日 中学校長からねりまの名木指定解除申請書が提出される

●7月14日 環境部みどり推進課が法人本部施設課長を訪問し、健全木である名木の伐採は受け入れられないとして学芸大学に剪定による検討を要請

検討内容は
1、剪定について
・区が実施した樹木診断では健全度区分5段階評価で高い方から2、3段階の健全度で、伐採相当の健全度ではない。自然樹形を意識し、高さおよび枝張りを約5m程度縮小する剪定と枝透かしを行ってください。

・区では名木所有者に対し、3年に1度、1所有者あたり30万円を上限として申請に基づく剪定経費を補助している。剪定による保全を検討いただける場合はさらなる補助について協議させていただく準備をしている。

2、倒木による事故発生時の懸念について
・倒木等の事故について、区が責任を負うことはできないが、区ではねりまの名木を対象にした賠償責任保険に加入しており、基本的には保険の適用が可能であると考えている。
7月29日にはみどり推進課長から検討の要請文を大学施設課長宛に送付。

●9月16日 練馬区長から大学学長と中学校長宛に、剪定による適正管理を行い保全に努めていただき、伐採について再考を要請する文書を送付

≪学長からの回答≫12月7日
再度検討したところ、剪定やケーブリングにより一時的な倒木リスクの軽減は可能だが、根本的なリスク回避とはならないこと、倒木を防ぐケーブリングはグランドや通学路の障害となり、児童生徒の十分な安全確保を大前提とした付属学校の教育活動に支障をきたす恐れがあること、基礎工事過程で根や地上部を痛めること、当該ヒマラヤスギは幹周・高さが肥大化していて重量負担となり、ケーブリングでは支えられない可能性がある、などの理由から安全確保のためには伐採をせざるを得ないとの結論に至った。

このやり取りをしている中、8月に学校は倒木による人身事故を防ぐために台風シーズンを前に、最低限の応急対策として応急剪定をしたことが判明。早期に伐採したい旨の要望を受ける。その後も再検討を依頼したが、伐採する考えに変わりはないとの回答で、緑化委員会に諮問することとした。

●12月7日には練馬区議会からも『「ねりまの名木」ヒマラヤスギ並木の保全を求める要請書』を中学校長と学芸大学学長宛てに送付。

緑化委員会は4名の学識経験者、5名の区議会議員、区民公募による選出が5名、区の関連団体からの選出6名の合計20名の委員で構成されています。
多くの委員から「地域のシンボルであり、親しまれてきた。ぜひ残して欲しい。再検討をすべき。」などの意見がありました。
また、「11本切る必要があるのか。(資料の写真から)上部は剪定ではなく伐採に等しい。切り方に問題がある。補植のしくみはつくれないか。」などの意見もありました。

本部課長は
樹木医2名と残せないか検討したが、健全度は高くない。
今年夏に剪定したのは区からも5m切ることが有効と言われ、上部を軽くするために剪定した。
ケーブリングは通学路を横断するため危険。また、1.5倍に肥大化しているため、ケーブルの本数や太さが必要。
倒木や落雷による被害なども起きている。
「みどりを愛し守りはぐくむ条例」の条例文には指定解除しないと伐採してはいけないとの記載はない。危険との判断から伐採をすすめていく。
ときっぱり意思表明をされました。

条例について、区は所有者のこともあるので、条例にないからと委員会の同意前に伐採した場合、名前が出る旨を伝えました。

委員からの「もし伐採した場合、代りの木を考えているか」の質問には「まだ検討していない。予算もあり、危険度の高い樹木から進めていくのでいつ順番が来るかわからないが、倒すリスクの少ない樹木を考えていく」
との回答でした。

区と法人それぞれが樹木医を入れた上での検討結果ですが、双方の見解が全く違うため、合意を図ることができず、今回の委員会では諮問は継続となりました。

確かにこの並木は貴重な存在で、私もここを通る時は清々しい気分になります。
みどりは地球温暖化を抑えるためにも必要です。
児童生徒の安全確保も絶対条件ですが、一度伐採してしまったら二度と元には戻りません。樹木にも命があります。

何とか残せるよう協議を続けて欲しいです。

校舎側のヒマラヤスギ(後列)