「東京の23特別区における『ゼロカーボンシティ』への道」講演会に参加
20日、特別区議会議員講演会「東京の23特別区における『ゼロカーボンシティ』への道」に参加しました。
講師はジャーナリストで環境カウンセラーの崎田裕子さん。崎田さんは「ゼロカーボンシティ特別区調査研究チームリーダー」です。
講演内容は気候危機の現状と課題、国・東京都の取り組み、そして特別区における取り組みの状況と方向性についてお話を伺いました。
加速する地球温暖化
地球温暖化による異変は北極や氷河の氷が溶け水没の危機にある島、生態系への影響、マラリアやデング熱などの伝染病、作物の異変、不作など、私たちの身近なところでおきていること、またここ数年の豪雨や高温も地球温暖化に伴う気温上昇と水蒸気量の増加が寄与している可能性が高く、熱中症で命を落とす市民(特に高齢者)が増え続けています。もはや温暖化は自分たちの身に迫った問題になっています。
世界の動き
国は熱中症アラートをこれまでより1段階厳しい段階を入れることや、アラートが発信された時、高齢者などに対応する「クーリングシェルター」を制度化する検討をしているとのことです。行政だけでなく、地域で普段から活動するしくみを作る、例えば介護のしくみと連携することなどが話し合われているそうです。
このままでは2100年に世界の平均気温が最大5.7度上昇することが予想され、2℃までに抑えないと、どんな対策をとっても徐々に地球環境が悪くなる負のスパイラルに入っていくと報告されています。それをできるだけ止めて2100年から回復に向けていくためにはできれば1.5℃に抑えることが必要とされ、2015年に世界でパリ協定を結びました。
今世界の平均気温は産業革命から1.9℃上がっていると言われていますが、最近の発表によると東京中心部は2.5℃上昇していて、まさにヒートアイランドです。
日本では
世界で脱炭素社会に向けて動き出し、日本もCO₂排出を2030年に13年度比で26%削減する目標を掲げ、さらに2050までにゼロにする宣言をしました。
2021年にはCOP26が開催され、2030年に世界のCO₂排出量を2010年度比で45%削減、2050年にゼロにすることを世界で共有し、日本でもさらに取り組みを強化して2020年に脱炭素実行計画に2兆円の基金を用意することを決定。経済界も加わり始めました。さらに2021年には2030年の削減目標を46%としました。
フォアキャスト型からバックキャスト型へ
日本の目標設定と対策の立て方は、これまでの目標だと今後どのくらいできるのか積み上げていく「フォアキャスト型」でしたが、地球環境がこれ以上悪化した場合に私たちの将来どうあるべきかの目標をまず立てて、それに向かってどう取り組むか対策を考える「バックキャスト型」の目標と設定の立て方への大きな転換は重要とのことです。
2021年のCOP26で2030年にco2排出量を45%削減、2050年頃ゼロの目標を世界が共有し、国内でもゼロカーボンを表明する自治体が増え、練馬区も昨年表明しました。今年度中にあらたな環境計画が示される予定です。
自治体が表明することは「2050年に排出量ゼロをめざす」という宣言であり、多くの自治体で方向性についてみんなで話し合い、新しいまちづくりをすすめることで、地域の活性化につながることを崎田さんは期待しています。
東京都の取り組み
東京都は2019年に「ゼロエミッション東京戦略」を策定し、2021年には「2030・カーボンハーフ」を提起し8項目の具体的な施策を示しました。
・再エネ主力電源化
・水素の拡大
・都内全てのビルをゼロエミッションビルに
・都内を走る全ての車をゼロエミッションビーグルに
・3R推進 持続可能な資源利用
・co2実質ゼロのプラスチック利用(ワンウェイプラゼロ)
・食品ロス発生量実質ゼロ
・フロン排出量ゼロ
②の水素拡大について、東京都はエネルギーの大量消費地であり、新しいエネルギーを生み出す必要がある。再エネ由来co2フリー水素を脱炭素実現の柱にしていく。
ゼロエミッション東京戦略アップデート版では、2050年実質ゼロは難しく8~10%は残るのでは。残るカーボンオフセットの部分は森林の豊かな町と連携し、森林整備をする。
具体的な取り組みは
1、エネルギー・・ 再エネの基幹エネルギー化
2、都市インフラ・・ゼロエミッションビルの拡大(高断熱、高気密)
3、ゼロエミッションビーグルの普及・・公共交通 ZEV普及プログラム
4、資源・産業 3Rの推進・・プラスチック対策(削減プログラム) サーキュラーエコノミー、食品ロス、フロン対策
5、気候変動適応計画
6、共感と協働・・区市町村との連携強化 都庁の率先行動 世界諸都市との連携強化 サステナブルファイナンスの推進 ・・行動や社会システムを変えていく⇒職員の率先行動、ゼロエミ都庁行動計画
都は全国初の太陽光パネル設置を義務化しましたが、住宅が個別に設置することではなく、大手住宅メーカーを対象として都内で住宅供給する延べ床面積合計年間2万㎡以上が条件です。
「ゼロカーボンシティ特別区」に向けて
2021「ゼロカーボンシティ特別区」に向けて、葛飾区の提案で重要なことなのでしっかり研究したいとのことで崎田さんにリーダーをお願いし、2021年度に調査研究をおこないました。「23区全ての皆さんで実現に向けた取り組みにするきっかけになるような研究会にしたい」と色々な区に呼びかけをした結果13区で職員1~3人参加してくれたそうです。残念ながら練馬区は参加していません。
オブザーバーとして東京都環境局総務部環境政策課、東京二十三区清掃一部事務組合総務部企画室が参加されたそうです。
日本の総人口の8%を占める特別区の人口で、排出されるco2は日本の38%という責任重大な数値です。多くの区が連携することが大事。
調査データ参照
908d0dde4977920f32f86133d6c73e5b2447223f.pdf (tokyo23-kuchokai-kiko.jp)
2018年度の特別区の部門別co2排出量の実績を見ますと、排出全体量の比較では
港区、大田区、江東区、千代田区、新宿区、世田谷区、足立区、中央区、渋谷区、江戸川区、板橋区、品川区、に次いで練馬区は13番目です。
しかし部門別の割合で見ると、家庭から排出されるco2については練馬区は杉並区、中野区に次いで3位です。
参考として示された特別区における温室効果ガス排出の将来推計の資料によると2050年にゼロカーボン達成は困難とのことです。
取り組みを進めるために必要な支援としては調査から「現状分析や課題把握」「財政」「施策立案」への支援を求める区が多いことが示されています。
また、それぞれの区では取り組んでいても他自治体や民間企業との連携をしていない区が約半数あります。
これらの調査から、「23区が2050年カーボンニュートラルを共通目標として連携することで人々の暮らしや生産活動の根幹に脱炭素の重要性を浸透させ、区民、事業者、教育機関、行政、来街者など特別区に関わるあらゆる主体が一体となった脱炭素に向けた取り組みを加速させるとともに都市と地方の地域特性を踏まえた役割分担と相互発展により、「ゼロカーボンシティ特別区」を実現する。」というビジョンを設定しました。
12月に中野区でおこなったゼロカーボンシンポジウムでは「2050年の中野区にどんな姿を描くか」をテーマに区長、地域住民、が話し合い、良い提案ができたそうです。環境分野の専門家、地域でまちづくりに関わっている人、商店街、消費者、それぞれの立場からの提案が出され、特に大学生から「自分たちと次の世代がもっと関心を持てるように環境学習をしくみとしてしっかり定着して欲しい」という感想が出たことに「こういう声を集めれば地域の脱炭素の未来が描ける」と崎田さん。
今様々な場で「市民会議」が開かれています。私も練馬区に要望しているところですが、まだ実現していません。
連携することが望ましい取り組み例
23区の共通の枠組みとして
・業務部門
建物の省エネ化、再エネ電力調達共同購入、ZEBの普及、教育機関への省エネ再エネ導入の促進
・家庭部門
電力共同購入、ZEHの普及
・運輸部門
燃料電池、公共交通、シェアサイクル
・廃棄物部門
2R リユース 23区分別リサイクル 東京二十三区清掃一部事務組合ではCCUSを来年度の研究テーマにしているそうです。
・その他
教育機関へのはたらきかけ・・環境教育、若者の意見聴取
森林は姉妹都市連携など(最後の8%~10%は森林が吸収してくれる。吸収量の確保。
実現に向けて連携した取り組みとして需要な課題
特別区における取り組みの今後の課題
1、再生可能エネルギーの導入促進・・新宿区はエネオクと連携(せり下げ方式)
2、建物・住宅のZEB・ZEH普及
3、中小企業の脱炭素化への支援の定着
4、吸収量の確保・効果の把握・・森林
各区の取り組みなどに関するデータをもとに23区で情報共有・意見交換をしながら行政、関係団体などと連携し、共通課題に関する検討をおこないながら事業者から提案募集や23区一体で取り組む事業を実施していく流れが実現するとのことです。
わたしたちにできること
エネルギー、ものづくり、移動、地域・くらし、の4つのポイントで家庭や仕事、地域で一緒に考え取り組んでいく。
今回の講演会の中で、エネルギー起源CO2削減に向け、CO2排出の少ない電源確保が重要であるとして、電力中御研究所の資料をもとに以下の電源構成が示されました。
①再生可能エネルギー
②水素 アンモニア発電 将来的にはCO2フリー水素
③原子力 ただし東京電力福島第一原発事故を考え、安全対策をしっかりした上で再稼働する。安全性の高い小型炉の新設。CO2排出の少ない電源を残しておくことは重要。
④化石燃料(ガス・石炭・石油)
火力を使うならCO2を回収して地中に埋め活用するCCUS付きで
しかし、原子力については建設・燃料輸入・生産・使用済み燃料の処理・事故の大きさ・廃炉を考えると、決してCO2削減にはならず、安全性についても事故の可能性はゼロではないことから、残しておくことが重要な電源として入れるべきではないと考えます。
また、化石燃料も再エネがさらに普及するまでは最小限に留め、できる限り早い段階でゼロにするべきと考えます。
水素・アンモニアについてはコストや、設備、輸送、現段階では原料に化石燃料を使いCO2フリーになるには年数もがかかることなど、国も課題あるとしています。
都や23区の具体的な取り組みや連携の必要性について詳しく聞くことができて参考になりましたが、上記の電源構成については私の考えと異なりました。
再エネ100%の早期実現に向けて様々な機関が連携するとともに、私たち市民が生活を見直し、必要以上の電気を使わず一人ひとりが節電・省エネの努力をすることが大切です。
地球温暖化や自分たちの使うエネルギーについて、これからもみなさんと一緒に考えていきたいと思います。