骨抜きの「練馬区個人情報の保護に関する法律施行条例」に反対!

今定例会で提出された個人情報保護条例に関する議案に反対の討論をおこないました。
以下討論の内容です。

インクルーシブな練馬をめざす会を代表して、議案第100号 練馬区個人情報の保護に関する法律施行条例、101号練馬区情報公開および個人情報保護運営審議会条例の一部を改正する条例、102号 練馬区情報公開および個人情報保護審査会条例の一部を改正する条例に反対の討論をおこないます。

デジタル社会の形成を図るためとして、2021年5月に個人情報の保護に関する法律の一部が改正され、国が定める全国共通のルールに一本化されました。これに伴い、現行の条例を廃止し、新たに必要な事項を定めた「練馬区個人情報の保護に関する法律施行条例」を制定する、審議会に諮問する事項が大幅に減少するために組織を見直す、法改正に合わせて審査会条例の整備をおこなう、という議案の内容です。

そもそも自治体が独自に定めた規定を一本化し、共通の規定に統一する法改定そのものに反対です。

自治体の個人情報保護条例は、多くが国の法律より先に制定されています。「我が国の個人情報保護法制は、地方公共団体の先導的な取組により、その基盤が築かれてきた面がある。」と国も認めています。

練馬区個人情報保護条例は2000年3月に制定され、目的には「個人情報に係る区民等の基本的人権の擁護と信頼される区政の実現を図ることを目的とする。」と記載されています。しかし、新たに区が制定する施行条例には目的が全く入っていません。

「目的として主権者は区民であること、基本的人権の尊重を掲げるべき」と区に要望しましたが、区は「法に基本理念として個人情報は個人の人格尊重の下に慎重に取り扱われるもの、と定められているから法と重複する独自の規定を設けることは不要。」との答えでした。
法にあるから区の条例には不要、という姿勢ではなく、国に先駆けて個人情報の保護に取り組んできた区として基本理念は外せない、という意思を示すべきです。

また条例の名称についても法の施行条例ではなく、個人情報保護条例の名前を残すよう求めましたが、「区としては法の適用に必要な施行条例として定める」と名称からして骨抜きになってしまいました。世田谷区は「改正個人情報保護条例」とし、区の現行条例の基本理念は引き継ぐ、という姿勢が伺えます。

要配慮個人情報については「地域特性に応じて条例要配慮個人情報として条例に定めて良い」とされています。法では「許容されない」「してはならない」ことが多い中で、「できる」ことはすべきです。

要配慮個人情報はできる限り収集しないよう規定するとともに、差別や偏見などの条例要配慮個人情報も「区にはない」と決めるのではなく条例に規定するべきです。

さらに匿名加工情報提供に係る提案募集について区は「国での活用事例が乏しいことや、安全性の確保のための十分な準備が必要なことから当面は見送ることにしたが、今後実施に向けてすすめていく」とのことです。しかし安全性の確保に時間が必要なことは、行うべきではありません。

練馬区には2か所の自衛隊駐屯地があり、今年9月に全面施行された重要土地等調査規正法において注視区域に指定される可能性があります。指定された場合、総理大臣が必要とすれば周辺の土地建物の利用者とその関係者まで個人情報が調査され、利用状況が重要施設の機能を阻害する行為がおこなわれる恐れがある場合に対して罰則が適用されることもあるとしています。
しかし何が阻害する行為か、関係者とは誰か当事者に明確に示されず、調査の内容も開示されません。また第三者提供をしても本人に知らされません。
現行では審議会にかけて諮問しますが今後はそれもなくなります。区が必要と認めれば、本人が知らない間に提供されていることは人権問題です。
自己情報コントロール権の尊重、審議会に報告する、など区としてできることを最大限入れるべきです。

審議会については諮問ができなくなる事項が8項目もあり、大幅減少します。そのために組織の見直しとして現在25人までのところ、議員と職員を廃止し、区民と学識経験者の13人までとなります。審議会に諮問ができなくなる事項に関しては報告や意見聴取をおこなうべきです。議員の廃止については「委員会で発言できるから」という理由ですが、区民や学識経験者の委員と同じ場で問題を共有し、色々な立場での意見を聞くことが大切だと考えます。議員枠、職員枠を廃止することは反対です。

以上、自治・分権がないがしろにされ、区民の個人情報保護の水準を低下させる条例に反対します。