世田谷区「子ども条例と子どもの権利に関するシンポジウム」に参加

5日、子ども条例が制定されて20年を迎える世田谷区で開催された、子ども条例と子どもの権利に関するシンポジウム「『子どもがいきいきわくわく育つまち』ってどんなまち?」に参加しました。

保坂展人区長の開会挨拶に続き、第一部は東洋大学名誉教授で世田谷区子ども子育て会議会長の森田明美さんの基調講演、第二部は世田谷区子どもの人権擁護委員の半田勝久さんの活動報告、第三部は区長と区内で活動している子ども・若者・おとなによる「子ども・若者と考えるパネルディスカッション」と3時間半にわたるプログラムでした。

第一部 森田明美さんの講演

テーマは「子どもの権利を具体化する世田谷区の挑戦」です。
「子どもに必要なのは、子どもが権利の主体であることを自覚できる安心安全な毎日の暮らしのもとに展開される、いきいきわくわくする育ちであるが、すべての子がそうしたあたり前の日々を手に入れることができないでいる。こうした現状を踏まえ、世田谷区がどの年齢のどの子にも子どもの権利を具体化するためにどのような努力をしてきたかを国連子どもの権利条約の4つの一般原則から検証する」という内容でした。

●4つの一般原則とは
①生命、生存および発達に対する権利
⓶(一人ひとりの)子どもの最善の利益
③(参加を前提にした)子どもの意見の尊重
④差別の禁止

子どもの居場所は子どもにやさしいまちづくりの考え方によるべきだが、残念ながら日本はリスクやコストで語られてしまうことが残念。安心・安全の中におかれてつくりださなければならない。

日本財団の18歳意識調査によると17~19歳1000人の6人に1人が家庭に居場所がないと回答しています。
虐待通告件数は区児童相談所が設置されてから約2倍に増えたそうです。

●子ども条例の策定
1994年に日本が子どもの権利条約に批准・発効したのを背景に、2000年に「子どもを取り巻く環境整備プラン」を策定し、その重点取組みとして「子育ち・子育てを地域社会全体で支える」との社会的合意を形づくる」具体化のしくみをあげ、子ども条例の策定に向けて、子どもを含めた意見募集、子ども会議での子どもからの意見聴取などにより、2001年に条例制定、その後2回改正されています。

さらに条例の背景や施策の中で具体化はしたけれども条例ではしていなかった「子どもの人権擁護」を2012年に条例改正で追加しました。人権擁護委員を設置(せたホットの開設)。
せたホットができ、相談件数も増えたことも注目すべきことです。

世田谷区は子ども期・若者期の継続的な支援として2014年に「子ども部」から「子ども・若者部」に組織を改正しています。
私は以前からこのことは注目していて、練馬区は「子ども家庭部」の中の「青少年課」なので、特に若者のことが置き去りにされがちになっている社会状況において、区としてもきちんと部の名称に若者も入れるよう要望してきましたが、残念ながら未だにその気はありません。

●区立児童相談所の開設について
2020年に児童相談所を開設し、大きく変わったことは一時保護。
都がやることでどうしてもワンテンポ遅れてしまう。区にできたことで保護施策が大きく変わったそうです。
保護を可能な限り短く、しかも学校に通いながら安心して暮らせること、保護の一体化と社会的養護施設との連携が区主導でできるようになったことは重要な視点だとのことです。

最後に森田さんは、子どもがいきいきわくわく育つまち、空間の実現の取り組みに必要な子どもの権利の視点と方向性として「子どもの権利条約の4つの一般原則をつねに考え、子どもの最善の利益がどこでもどの子にも保障されているかの視点で、子どもの居場所の確保と支援の質の確立をすること」を掲げました。

子どもの権利条例をつくることは時間も労力もかかる大変なことです。
保坂区長は冒頭で「子どもは大人の従属物ではない。小さな市民」と述べられました。特に子どもの意見が尊重されず「子どもは口出しするな」になりがちな日本社会では、大人の意識から変えることが必要だと思います。
だからこそ子どもも大人も一緒に条例をつくることで、その過程も含めて市民一人ひとりの意識の中に根付く道具としても必要なものだと思います。

第二部、第三部の報告は次回に。