子どもにやさしいまちづくり

〜東日本大震災・原発事故からの「提言」〜

1月22日、東日本大震災子ども支援ネットワーク主催の報告会が東洋大学のスカイホールで開催されました。
4時間にわたる長時間の集会でしたが、震災を通して子どもの権利条約の重要性を改めて確認できるとても内容の濃い会でした。
そして支援を続けていく中で、子どもたちの表情が明らかに変わっていく話を聞き、子どもたちが前向きに生きる力の強さも伝わってきました。

東日本大震災子ども支援ネットワークは、被災した子どもや子育て家庭への支援のために、子どもの権利条約を基盤にした団体により、昨年の5月5日に設立されています。

その事務局長でもあり、東洋大学教授の森田さんの基調講演では震災が与えた子どもの困難を7項目の視点から捉え、まちの復興計画に子どもの権利条約をどう位置づけていくかを具体例で示しながら話して下さいました。
その7項目は昨年の3月11日から被災地の子どもたちが直面していることであり、ぜひ皆さんにも知っていただきたいと思います。
1、家族、親族、友人など支援者の喪失
2、転居(仮設住宅など)の不自由
3、活動空間の喪失
4、経済的な困窮
5、未成年であるが故の困難
6、障がい、病気などマイノリティ−の子どもの困難
7、原発事故による避難を余儀なくされたことによる困難

そしてこれらの状況に合わせて緊急時救済支援、中期的復旧支援、長期的まちづくり計画策定、と子どもたちへの段階的な支援が必要だということです。
その後被災地の状況報告がありました。

福島県相馬市教育委員会からの報告
相馬市にはこれまで子ども議会が無かったけれども、今回初めて子どもたちが議場で街づくりについて発表したそうです。
その中で子どもたちは「復興の20年、30年は私たちの人生そのものです。未来に役立つ人間になりたい。」と発表し、教育委員会では『ふるさと相馬子ども復興会議「チーム○」(仮称)(案)』の設立を準備しているとのことです。
そのサポーターとして日本ユニセフ協会からも報告がありました。
最後に相馬市の職員の方は「放射能のことはこれからどうなるかわからない。でもどんなところでも育つ力をつけることが教育」と涙ながらに訴え、胸が詰まる思いでした。

石巻市子育て支援課からの報告
石巻市は2010年に子どもの権利条例が制定されています。
震災で「生きる・育つ・守られる」の権利が失われつつあったが、行政だけではハード面での支援で精一杯で、子どもの心のケアまではできなかった。そこでNGOセーブ・ザ・チルドレンと出会ったそうです。子どもへのDV、ひきこもり、PTSDなどが増えつつある中でNPO・NGOとボランティアと行政が月1回情報交換会を開き、連携しながら支援を続けています。
そのセーブ・ザ・チルドレンが昨年11000人の岩手県、宮城県の小学生から高校生を対象に「子ども参加に関する意識調査」というアンケートをおこなったところ、約90%が「自分のまちののために、何かしたい」、約80%が「自分のまちを良くするために、人と話をしてみたい」と答えたそうです。そして岩手県山田町、岩手県陸前高田市、宮城県石巻市で小学5年生から高校生の子どもたちが「子どもまちづくりクラブ」をつくり週1回自分たちのまちづくりのために様々な活動をしています。

NPOこども福祉研究所からの報告
「子どもにやさしい空間を地域につくりだす 岩手県山田町ゾンタハウス」を建て、子どもたちの学習スペース、居場所、軽食を提供しています。ここの事務局長を森田さんが務めていて、大人たちが生活再建に必死な様子を見て、進学を言い出せず、将来への希望を失いかけている子どもたちに寄り添い、学習支援をする場所で、子ども委員会で「おらーぼ」(自分たちの家という意味だそうです。)と命名されています。隣接して大人の居場所として「街かどギャラリー」があり、大人と子どもの交流の場にもなっているそうです。
森田さんのゼミの学生たちもここでボランティア活動をして、その報告もありました。

この他にも災害子ども支援ネットワークみやぎ、無料の公立高校受験対策講座「タダゼミ」などの報告もあり、最後に提言が行われました。

森田さんは子どもたちの支援に対し大人の支援が終わらないと子どもの支援ができないとどこに行っても言われたそうですが、「大人たちの対立の中で子どもたちのためなら耐えられることを学び、大人と子どもが一緒でなければ復興はありえないことがよくわかった。」
と最後に話して下さいました。

この集会で多くの団体や個人が子どもの支援に携わっていること、でもまだまだ継続的な支援が必要なことがよくわかりました。そしてまちの復興のために「キミたちは大切な存在なんだよ!」と示してあげることが子どもたちの生きる力になるのだと思います。