「ストップ!英語スピーキングテスト」シンポジウムを開催

右からやない克子、大内裕和さん、山﨑まりも、きみがき

7月16日(土)、「ストップ!ベネッセ英語スピーキングテストシンポジウム」を開催しました。

主催は「英語スピーキングテストの中止を求める会@練馬」です。
都議会でこの問題に取り組んでいる日本共産党、練馬の都議会議員とや英津子さんと「練馬でも学習会を開いて多くの人に知ってもらいたい」と相談し、会を立ち上げました。発起人はとやさん、日本共産党練馬区議会議員の小松あゆみさん、そしてきみがきの3人です。

講師は武蔵大学教授で「入試改革を考える会」代表の大内裕和さんです。

私がこの問題に取り組むようになったのは、2月に大内先生の学習会に参加してテストの内容を知り、入学試験に導入することに危機感を抱いたからです。


スピーキングテストESAT-J(イーサット・ジェイ)についてはこれまでも議会での質問や、HPやFacebookで取り上げてきましたが、先生のお話を聞けば聞くほど中止すべきとの思いが強くなります。

スピーキングテストの実施日は11月27日(日)、予備日は12月18日(日)で、都内全公立中学校3年生が対象。受験申し込みは7月7日から始まっています。
テストの実施主体は東京都教育委員会で、運営は(株)ベネッセコーポレーションです。
東京都がスピーキングテストの都立高校入試への導入を発表したのは昨年の9月で、英語の4技能のうち「話す力」を高めることを目的としています。
大内先生は早い段階からテストの問題点を指摘、数々の記事や院内集会、都庁での記者会見(この場にはとやさん、生活者ネットの岩永やすよも同席、発言しています)など、多くの場で中止を求めてきました。
東京都はなかなかテストの詳細を示さない、都内各自治体の教育委員会も問題ありという認識がない、保護者への説明が十分ではないことで知らない保護者も多いまま申し込みが始まっています。

◆大内先生が指摘する問題点

1、公平かつ正確な採点はできるのか

採点はベネッセの関連会社がフィリピンでおこないます。
約8万人の回答を1か月半で採点できるのか(データ輸送にも時間がかかる)。
そして東京都が示す採点者の質については客観的な証拠がない。

2、評価の点数化の問題

以前のHPにも投稿しましたが、スピーキングテストは20点満点とします。そのため、まず100点満点で採点し、その得点をA~Fの6段階に振り分け、それをさらに20点満点で点数化します。
例えば80点~100点をAとして換算後の得点は20点、1点~34点はEとして換算後は4点という配点になります。つまりテストで80点採っても100点採っても最終的に調査書に反映されるのは同じ20点、1点採っても34点採っても調査書には同じ4点となり、大差があるにもかかわらず、同じ配点になってしまう、という評価方法です。これは公平性に欠け、1点で合否を分ける入試として成り立ちません。

3、タブレット端末を使用した実施方法

テストはタブレット、イヤホンマイク、イヤーマフを使用しますが、テストは前半実施と後半実施に分け、前半に使用したタブレットを後半でも使う「使い回し」です。もし前半の使用でうまく回答の音声データを録音できても、後半で不具合が生じた場合にどちらのデータも記録に残らない場合が生じないか危惧します。

4、ESAT-J(イーサット・ジェイ)とGTECどちらもベネッセ

現在、都内の49市区の自治体のうち9自治体の公立中学校で、ベネッセの民間試験GTECを実施していることがわかりました。練馬区も実施しています。東京都教育委員会もESAT-J(イーサット・ジェイ)とGTECが似ていることを認めています。
大内先生には保護者や生徒から「似ている」との声や、「実施している自治体の方が有利で不公平」などの声が多数届いているとのことです。

5、不受験者の扱い

今年の5月26日に東京都教育庁は、スピーキングテストを受けなかった場合の「不受験者の扱い」について公表しました。
ここが一番問題ではないかと思います。スピーキングテストを受けなった生徒への対応です。

下記を参照してください。

東京都立高等学校入学者選抜における東京都中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)結果の活用について|東京都教育委員会ホームページ (tokyo.lg.jp)

スピーキングテストの配点や、不受験者の扱いについて説明されています。
わかりにくいですが、スピーキングテストを受けなかった生徒については、来年1月実施の入試の学力検査における英語の得点と同じ得点の生徒が受けたESAT-Jの点数の平均値に照らし合わせ、「仮のESAT-Jの点数」として、その生徒のスピーキングテストの得点とする、という扱いになります。
不受験者の扱いは高校ごとに実施され、学力検査の同じ得点のサンプル数が少ないため、この方法だと学力検査が同じ得点でありながら、スピーキングテストを受験しなかった生徒が合格して、受験した生徒が不合格となる「逆転現象」も起きる可能性があります。

大内先生は、都が英語の学力検査とESAT-Jの結果の相関関係を明確に示すデータを公表せず、もしデータそのものがないとしたら、「絶対にやってはいけないこと。すみやかに撤回すべき」と強く訴えています。

本人以外の要因で点数が決まるような公平・公正ではないテストは制度として欠陥があり、「受験の原則に反する」とのことです。

不受験者と受験者の合否の逆転を説明

その他に

6、学力テストの点数と比較して、スピーキングテストだけで20点という配点の大きさ
7、受験生に通知されるのは総合得点とESAT-Jのグレードのみで、スピーキングテストについての開示請求には応じない。
8、ベネッセへの個人情報の提供と利益誘導、利益相反の疑い
9、家庭の経済力による教育格差の拡大
10、都内公立中学校の進路説明会におけるスピーキングテストの説明が不十分
11、スピーキングテストの結果は来年1月中旬に返却される予定なので、都立高校の推薦入試への反映は間に合わないだけでなく、その後の募集にも大きく影響し、ギリギリになって志望校を変更する受験生、保護者、教員への負担など大きな混乱を招く可能性がある

などの問題点についても説明がありました。

練馬区でGTECは中学2年生を対象に実施しています。これまで何度か質問していますが、教育委員会は「1つのグレードの中で、到達状況に応じて点数の開きがあるのは当然のこと。スピーキングテストがこの採点方法を選択していることに問題はないと教育委員会は捉えている。」「説明については東京都がおこなうものなので、そちらをもって代えさせていただく。内容については私どももきちんと確認して子どもたちに対応できるようにしたい」とのことで「問題あり」という認識がありません。

先生のお話の後、とやさんから都議会での動きの報告があり、その後参加者からの質疑応答の時間としました。
参加者からは受験生を抱える保護者、教員、中学生のお子さん自身、様々な立場から「やめて欲しい」「中止するべき」の声があがりました。

シンポジウムへの参加はzoom参加を含めて57人、会場は満席でした。
どうみても公平性・公正性に欠け、競争社会を助長するような制度を入学試験(しかも公立高校入試です)に導入するべきではありません。何と言っても一番の被害者となるのは受験する子どもたちです。

 

日本は子どもの権利委員会ら受けている勧告には以下のような内容があります。
・子どもが、社会の競争的性質によって子ども時代および発達を害されることなく子ども時代を享受できることを確保するための措置をとること。
・ストレスの多い学校環境(過度に競争的なシステムを含む)から子どもを解放するための措置を強化すること。

全ての子どもが差別なく学べる環境をつくることが私たち大人の責任です。引き続き中止を求めていきます。

左から小松あゆみさん、大内先生、とや英津子さん、きみがき