なぜ復興庁作成の原発処理水チラシを学校に?

復興庁HPより

昨年、区内全小中学校1年生の児童生徒に文部科学省作成の改訂版放射線副読本が配布されましたが、今回は復興庁が作成した「ALPS処理水について知ってほしい3つのこと」というチラシも配布していたことがわかり、予算特別委員会の教育費で確認しました。区民の方からも怒りの声が届いています。

このチラシには「トリチウムは体内に入っても健康への影響は心配ない」としてトリチウムを含んだ水を飲んでいるイラストが描かれています。
また取り除けるものは徹底的に取り除き大幅に薄めてから海に流すことや、世界でも既に海に流しているなど、安全性をアピールする内容が書かれています。

これに対し、なぜ突然このようなチラシを子どもたちに配るのか疑問の声が上がり、回収している自治体もあります。

Q:区は副読本と一緒にチラシが配布されていることとその内容を把握しているでしょうか。

A:ご指摘のご指摘のチラシは復興庁が中学生向けに作成したものであり、私どもも拝見しており、内容は把握している。

放射線に関する誤った情報に惑わされないようにすること、また誤った情報が広まることに苦しむ人が出ることのないようにするために、国が科学的なデータに基づき作成しているものであると認識している。

Q:チラシと共に配布された副読本には放射線の安全性がアピールされ、東京電力福島第一原発の事故についても「安定した状態を保っている、放射線の影響で人が近づけない場所はロボットによる遠隔操作など新しい技術の開発や活用が進んでいる、原発がないと電気が足りない」など、あたかも「安全だからもう気にしなくて大丈夫」と子どもたちに思わせる内容になっています。しかしなぜ今でもロボットじゃないと入れない場所があるのか、なぜ事故が起きて避難する必要があったのか、そして今も帰れない地域があるのか、避難によって人々が分断され、家族がバラバラになったこと、原発に必要な核燃料とは何か、使い終わった核燃料はどうするのか、などについて児童生徒にきちんと知らせるべきですが、それについては書かれていません。

モニタリングポストが低い数値を示し国がもう大丈夫、と言っている場所でも、少し移動しただけで途端に高線量の数値に上がる場所がまだたくさんあります。

トリチウムに関しても漁師の方たちは海に流すことを認めていないにもかかわらず、飲んでも大丈夫、というようなチラシをなぜ今学校に配布を求めるのか、国の思惑に児童生徒を巻き込むことは許せません。
教育委員会としてもチラシの配布を中止、回収を学校に呼びかけるべきと考えます。

A:副読本については東日本大震災により避難している児童生徒に対するいわれのない偏見、差別等が起きている現状、今なお放射線に対する不安や混乱、風評被害など、解決しなければならない課題が様々ある。
このことを踏まえて復興が進展している被災地の姿を伝えつつ、児童・生徒が放射線に関する科学的な知識を身につけて、理解を深めることができるようにすることが、本副読本の狙いとしている。配布の中止、回収を呼びかける考えはない。

教育委員会はチラシの配布についてこちらから情報を提供するまでは知らなかったようです。
原発事故から11年経った今でも学校でいじめや差別など、解決しなければならない課題が様々あることを教育委員会が認識していたなら、学校と共に加害者にも被害者にもなりうる子どもたちへの対応策を早々に考えるべきでした。

そして東京電力福島第一原子力発電所で作られた電気は東京で暮らす人たちが最も多く使って便利な生活をしていたこと、復興が進んでいると言ってもまだ帰れない場所があることなど、事実をきちんと伝え、子どもたちが一緒に考える時間をつくるべきです。