ヤングケアラー支援は子どもの権利の視点で
昨年2月の一般質問と予算委員会で生活者ネットは「勉強や仕事をしながら家族をケアする18歳未満の子どもや若者」、ヤングケアラーについて質問しました。
「遅刻や欠席、忘れ物が多い原因が家族のケアのため、と気づいてもらえず困った子どもと受け取られて傷ついている子どもがいるかもしれない」という視点で、教育委員会で実態調査をするよう求めましたが、その時の答弁は「介護を行う者の実情については、区が実施した在宅介護実態調査によれば、主な介護者は20代で0.2%、20歳未満はないとの結果が出されているため、教育委員会としては現段階では実態把握の必要はないものと認識している。」とのことでした。
しかし昨年厚労省が「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」を実施した結果、要保護児童対策地域協議会(以下要対協)におけるヤングケアラーの認識が低く、実態を把握している協議会が少ないことから、「要対協においてヤングケアラーの概念について認識するとともに、関係機関により支援が行われるよう、適切な対応を図ること」という要請を各自治体に送っています。
そして今年の10月5日、厚労省はヤングケアラーについて「12月にも初の実態調査を始め、自治体や教育委員会などを通じ、該当する小中高生の人数や介護の内容を調べる」ことを発表しました。調査の必要性が明確になり、私たちが要望してきたことがようやく実現します。
そこで今月の決算特別委員会で要対協におけるヤングケアラーと取り組みについて再度取り上げました。
要対協ではヤングケアラーを要保護のケースの一つとして位置づけて状況把握をおこなっているのか聞いたところ
「要対協の調査機関である子ども家庭支援センターでは、既に個々の要保護児童や要支援児童について、関係機関を通じて把握し、連携しながら支援をしている。
例えば事例として、保健相談所からの通告により把握した重度の障がいがある妹の介護を担わされていた児童について、福祉事務所の障害担当と連携して、児童の負担軽減につなげている。また、親から家事全般を強要されており、学校に通えないとの訴えがあった児童については、児童相談所と連携し、一時保護につなげている。こういった個別の取り組み加え要対協においても取り上げ、実態の把握に努めていく」
との答えでした。
またヤングケアラーということが表に出にくく、本人がなかなか言わないことから虐待やネグレクトとして把握され、調べていくと実はヤングケアラーだったという事例もみられます。中にはもう何年も続いているというケースもあります。早期発見と迅速な対応が必要であり、この課題についてはどのような取り組みをしているのか、という質問には
「学校では児童・生徒の小さな変化にも気を配っており、欠席しがちになった場合には、教員やスクールソーシャルワーカーが対応して、早い段階で問題を把握するよう努めている。また、子どもたちに身近な児童館職員なども様々な相談に応じて、話を聞き取りながら悩みを受け止めている。関係機関と連携してできるだけ早期に家族を福祉サービスにつなげ、家庭生活の安定を図っている」
連携はしっかりしているとのことですが、ヤングケアラーに対する支援は、子どもがその間、子どもらしく生きる権利や学ぶ権利の侵害であることも指摘されています。
「家族の手伝いをするのは当たり前」「自分しか介護する者がいないから仕方ない」と自分の生活を後回しにし、大事な成長の時間を奪われていることに本人も気がつかなかったり、諦めていることもあります。子どもの権利の視点でヤングケアラー支援に取り組むよう要望しました。
それと同時にその家族も支援につなげることが重要です。
教育委員会は昨年「調査は必要ない」と言っていましたが、すでに2人の児童と家族が支援につながった事例が実際にあるのですから、12月に国が予定しているヤングケアラーの自治体実態調査が「やりました」だけのものでなく有効な内容であることを期待し、ひとりでも多くの児童生徒の「困った」を支援につなげるための更なる取り組みを求めていきます。