森林環境譲与税の使途について~予算特別委員会より~

武石の巣栗渓谷

2024年度から森林環境税の課税が始まり、年額一人1,000円が徴収されます。

これはパリ協定に基づく温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から創設されました。
国民一人一人が等しく負担を分かち合って森林を支える仕組みとされています。

その税収を見越して「森林現場の課題に早期に対応する」という観点から、森林環境譲与税が今年度から前倒しで交付されています。
徴収総額見込みは約620億円。譲与税の配分ですが、5割を私有林人工林面積、2割を林業就業者数、3割を自治体の人口で按分しています。練馬区への今年度の交付額は2,775万円です。

使途は

・市町村は間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の森林整備及びその促進に関する費用

・都道府県は森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用

また適正な使途に用いられることが担保されるよう森林環境譲与税の使途については、市町村等はインターネットの利用等により使途を公表しなければならないこととされています。

練馬区は今後公表の予定とのことですが、使途は憩いの森の区民事務所管理団体育成、保護樹林の剪定の補助の充実、憩いの森の維持管理、国産材の木材の積極活用で、今回はベルデ軽井沢のベランダ改修等の工事にも使ったそうです。

練馬区の人口は23区中2位で、譲与税額も2位。23区全体では約3億5000万円です。このままいくと最高9億円になると試算されています。

今年度の全国の譲与税ランキング上位100の自治体を見ると、1位が横浜市、3位が大阪市、8位が名古屋市、31位がさいたま市、63位が世田谷区、など林業費がゼロの自治体が上位に入っていて、その総額は約5億円です。

日本全体の環境問題として各自治体が森林環境保全に協力する考えそのものは間違っていませんが、譲与税としての按分や使途について課題が浮き彫りになってきています。

使い道に困っている区もあるとのことで、使途の公表を見ても結局国産木材を利用した学校や公共施設、椅子などの備品の購入に使うところが多いようです。

日本熊森協会によるアンケートでは、23区で木材の利用が15区、基金や積み立てが6区、他自治体と協定を結び、森林整備に使う区が8区です。
協定の例では中央区が桧原村の「中央区の森」の天然林や広葉樹林化、中野区が水上町の「中野の森」、豊島区は秩父市と協定し植林、残りは積立、板橋区は基金設立と日立市の分収林、世田谷区は群馬県川場村と協定、里山自然学校をおこなうなど交流事業にあてています。

国会では税の成立に際して衆参両院で、「森林環境税を地域の自然条件に合わせた広葉樹林化に使うことと」いう附帯決議がつきました。
安い海外の輸入品に押されて国産材の需要が減り続け、管理もされないままに放置されている山林が増えています。その結果、豪雨や台風の際の土砂災害を多発させるという深刻な問題が生じているため改善が急がれ、根の張る広葉樹林などの天然林に再び戻していくことが重要な課題とされています。

ここ数年の気候変動による集中豪雨、山崩れ、川の氾濫などが各地に大きな被害をもたらしました。中でも人工林の山崩れが多くなっているとのことです。山崩れで流木が橋の欄干をせき止めて氾濫する例もあり、しっかり根を張り災害に強い天然林を再生することが災害防止につながり急務とされています。

練馬区と友好都市の上田市で最も森林面積が大きいのが武石地域で9割が森林です。
昨年の台風19号によって武石の番所が原スキー場が甚大な被害を受け、今シーズンは閉鎖しています。その上田市の今年度森林譲与税は約2,100万円で練馬区より少ないです。

区内の樹木やみどりを増やすことも大切ですが、譲与税の本来の目的に合った利用として上田市の森林再生に協力することと、一般財源に入れてしまうのではなく、積み立てることを予算委員会で提案しました。

区の答弁は「区としての判断として練馬区にしかない区有財産を残していくことを考えて当てている。木材の残材を積極的に活用すること自体も結果的には山林を適切に管理することにつながっていくことを考えればやれることは全てやっている。」とのことでした。

しかし、区内の憩いの森の整備など、みどりの保全は「みどりの葉っぴい基金」もあります。
森林環境譲与税そのものの見直しも必要ですが、山林は私たちの生活に欠かせない水源地でもあり、急ぐべき課題は森林整備と考えます。

 

 

 

 

 

 

 

間伐材の利用も必要ですが、今年度の全国の取組結果によっては譲与税の廃止も含めた見直しも考えることを求めて次に移ります。