子どもの権利をまもる児童相談所を

8月末、東京・生活者ネットワークの都議・区議で新宿にある東京児童相談センターを視察しました。

都内には児童相談所が11か所あり、児童相談センターは他の10か所の児童相談所を支援する中央児童相談所として位置付けられています。担当は都内9区と9町村です。

センターの主な機能は相談、援助、治療、一時保護で児童福祉士や児童心理士などの専門員を含めて約300人の職員体制です。
相談件数は年々増え続け、センターに寄せられる件数は年間約2万8000件、そのうち約5700件が虐待に関する内容です。

センター内には複数の相談室があり、見学中にもいくつかの部屋がふさがっていました。子どもを遊ばせながら心理状況を読み取る部屋もあります。必要に応じて一時保護の対応をしますが、その一時保護所もいっぱいいっぱいの状況です。
また、様々な要因から学校に行けない子どもを通所か宿泊で支援するサポートステーション「ぱお」も併設しています。ここでは保護者支援もおこなっています。

2016年の児童福祉法の改正で23区各区に児童相談所の設置ができるようになりました。

すでに世田谷区と江戸川区は来年4月に、荒川区も来年度中に開設の予定です。
世田谷区は子ども家庭支援センターと児童相談所が一体となることで分断がなく日常的に把握ができ、有効に組み合わせることで問題の解決まで協働で関わることができるとしています。また一時保護所についても「収容所」的ではなく、子どもの意見表明権・権利擁護のための仕組づくりに取り組むとしています。

また、江戸川区も「子どもは地域の宝であり、江戸川の子どもは江戸川で守る」ことを理念に、一貫した指揮系統の下で虐待対応を行い、子どもの権利を守るとしています。

練馬区は「児童相談所の設置はせず、子ども家庭支援センターと児童相談センターの連携強化で対応する」という区長の考えで、区の職員を児童相談センターに派遣したり、テレビ会議を始めたり、子ども家庭支援センターに弁護士や児童福祉士などの専門職を配置する取り組みをしています。「設置しない」と言いつつ来年度は子ども家庭支援センターに児童相談センターのサテライトオフィスを設置する予定で、あれこれやってはみるものの、どうしたいのか一貫性が感じられません。
子どもの権利条例もつくらないと言っている区が、本気で「子どもの最善の利益」を保障できるのか疑問です。

確かに相談支援体制の規模や専門職などの人員配置は簡単にできるものではありません。しかし都の一時保護施設も満杯の状況の中で、困難を抱えている子ども一人ひとりに迅速かつきめ細かな支援をするためには、より身近なところに児童相談所を設置することを検討するべきと考えます。