児童相談所の設置に向けて~特別区議会議員講演会より~

26日、区政会館において特別区議会議員を対象に児童福祉法改正の背景と概要について、厚生労働省の雇用均等・児童家庭局総務課の虐待防止対策推進室室長補佐、百瀬秀さんのお話を伺いました。

2015年度の全国の児童相談所での児童虐待相談対応件数は10万件を超えました。
増加の主な原因は心理的虐待で、子どもの目の前で配偶者に暴力をふるう面前DVの警察からの通告が増加していることです。
また、マスコミによる児童虐待の報道により、国民や関係機関の意識が高まり、通告が増加したことも原因とされています。

昨年6月に児童福祉法が改正され、これまで明確に謳われていなかった「子どもの権利」の理念が明確化されました。
こうした背景からきめ細かな対応が必要となり、児童相談所の設置を促進するため、改正された児童福祉法に基づき特別区でも児童相談所を設置できることになりました。
これにより、23区中22区が区内への設置に向けて検討を始めています。
特に残念な事件が起きてしまった区では、自区内への設置が悲願でしたから積極的に計画を進めています。
しかし、残りの1区、練馬区だけが設置を考えていません。

児童相談所の設置によってこれまで市区町村にはなかった一時保護や措置(在宅指導、児童福祉施設入所措置、里親制度など)の権限を持つことになります。
そのためには児童福祉司、スーパーバイザー(児童福祉司への指導・教育をおこなう)、児童心理司、医師、保健師など専門の資格を持った職員が必要となります。
児童福祉司、医師、保健師は人口4万人に1人の配置が基準となり、さらに弁護士の配置も求められています。

また、一時保護については適切な保護が必要ですが、これまでは目的が明確でなく、対応が遅れるケースもあったために児童福祉法の改正では
・児童の安全の迅速な確保と適切な保護
・児童の心身の状況と置かれている環境の把握
などを明確化しています。

今から検討を始めても早い区で設置できるのが2年後。
現在ある児童相談所や保護施設の環境や人権問題など、課題があることも聞いていますが、初めて作るからこそ協議を重ね、子どもに寄り添った施設を作り上げていくことができるはずです。

施設や職員の確保、財政面など簡単に設置できないことはわかりますが、検討すらしないという区長の判断で止めてしまうのではなく、子どもの命を最優先に考え、区の職員をはじめ、子どもに関わる活動をしている団体、区民、議員などで時間をかけて議論し、設置に向けた検討をするべきです。