子どもの権利に基づいた復興のまちづくり~石巻子どもセンター「らいつ」視察報告~

 一昨年、「子どもにやさしいまちづくり」をテーマとしたシンポジウムに参加して、石巻市の復興について報告を聞きました。

 石巻市は2009年に「子どもの権利条約」を基に「子どもの権利に関する条例」が制定されています。この条例があったから子ども参加でまちの復興ができた、という話を石巻市福祉部子育て支援課職員の門馬一也さんから伺い、今年には子どもの居場所として「子どもまちづくりセンター」が完成したことを知り、ぜひ見学したいと菊地靖枝、橋本けいこ、やない克子の4人で8月に視察に行きました。

 石巻市は震災で約3000人の方が亡くなり、行方不明者が430人、今でも仮設住宅に入居されている方が約14000人います。

 石巻子どもセンター「らいつ」は駅の近く、商店街の中にあり、2年前の報告者だった門馬さんが今回もお話して下さいました。

 当初、居場所を失った小学生は引きこもりや友達関係をうまくつくれない、中高生は夜、駅前に集まり大騒ぎする、登校拒否などの行動が見られたそうですが、2年後には社会変化や家庭環境の変化などで自分の存在感を失う子どもたちが発生したとのことです。

 特に家庭環境においては離婚が多くなり、新しい父母に現実を認められない、「自分はいなくてもいいのでは」と社会そのものに自分の居場所を失った子どもも多いそうです。

 そのような状況で市は国際NGOセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと連携し、子どもの支援を始めました。

 子どもたちにアンケート調査をしたところ、多くの被災した子どもたちが、「まちのために進んで復興活動に参加したい」と思っていることがわかりました。

 その場所やきっかけがないことから石巻子どもまちづくりクラブができ、自分たちのまちを知る、歩き聞く、ワークショップなどの活動で、「子どもセンター建設構想」が生まれたそうです。

 センターは子どもたちが自ら企画・デザインし、運営にも直接関わっていて、そのことで単なる子どもの居場所だけでなく、社会参加の発信拠点としての機能も併せ持つ施設となっています。

 市が直営で運営し、職員採用においても「子ども観」を重視し、徹底した研修を実施しているそうです。

大人が提案した企画も子ども会議で却下されてしまうこともあるとのことで、思わず笑ってしまいます。

この日もおおぜいの子どもたちが好きな場所で元気よく遊んでいました。「今日はどのスペースで過ごそうかな?」と館内すべてが居場所になっています。

 今では子どもたちの様子も安定してきた、とのことでした。

 
「子どもの権利をわがままと捉える大人がいるが、反対する人はわがままと権利のライン引きができず、子どもの可能性を信じていない。最大の課題は大人の理解。」ととても重要なキーワードを聞きました。

 震災復興に関わらず、どんな場合においても子どもの権利に基づいたまちづくりをすすめることが結果として活き活きとしたまちになるのだと思います。